格闘ゲームとコミックをミックス『スコット・ピルグリム』の世界

 『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』は数あるコミックの実写映画の中でも、異彩を放つ映画だ。紙の上ならではの誇張表現や擬音文字を映像でも巧みに表現し、原作以上に強烈な視覚効果で笑いを誘う。映画本編前に流れるユニバーサル映画のロゴマークからして、8ビットゲーム風にアレンジされる徹底ぶり。これから始まる奇妙な世界とエドガー・ライト監督の熱意が凝縮されているようだ。財布

 原作はカナダ出身のブライアン・リー・オマリーが2004年から2010年にかけて発表した、全6巻のシリーズ作だ。作者がトロントで体験した出来事をヒントにした青春ラブコメディで、日本発の漫画から強く影響を受けているのは一目瞭然。丸みを帯びたかわいい絵と、主人公のスコットの半径5mのグダグダな日常生活を描く内容に、日本人も親近感を抱くだろう。強さと男らしさが売りのマーヴェル・コミックやDCコミックがメインストリームの北米で、発行部数100万部を越えたというから驚かされる(現在、ヴィレッジブックスから日本語版が発売中)。 カルティエ

 ライト監督は「原作に忠実」を心掛けつつ、「スクリーンではもっと無茶な表現ができると思ってワクワクした」と、グラフィックス、ワイヤーアクション、VFXなどを多用している。登場人物が暮らすハイパーな世界では、文字がキャラクターに合わせて動いたり砕け散ったりする。ライフの状態が片隅に現れたり、アクションの軌跡が人物を包み込んだりもするのに、グラフィックが人物の邪魔をしない。デザインとタイミングが絶妙なのだ。今までになかった映像体験なのに違和感を感じないのが不思議である。ハンドバッグ

 スコットが7人の元カレとバトルする場面は、映画のいちばんの見どころだ。格闘ゲームと音楽とカンフーをミックスして、今まで見たことのない世界が繰り広げられる。現実世界ではあり得ない、重力を無視したアクションシーンを撮影するために、ジャッキー・チェンやジェット・リーとも組んでいるスタントコーディネーターと格闘コーディネーターが担当しているという。

 『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』の徹底したこだわりとばかばかしさに敵うコミックの映画化は、これから先にも現れないだろう。財布

 『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』は4月29日(金・祝)、シネマライズ他にて全国順次ロードショー。(文:落合有紀)

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